千葉大学 大学院医学研究院 和漢診療学講座

研修を希望される方へ

生涯学習(研修登録医)について

生涯学習(研修登録医)について

開業医や勤務医の先生に本院を開放、医学・医療の体験学習の場を提供して地域との連携を促進し、地域医療の充実と発展に寄与することを目的とする。

★目標★
1.和漢診療の基本知識(歴史および基礎理論)の習得
2.和漢診療学の治療法の概要の習得

★期間★
フルタイムでの3ヶ月での研修、あるいは週1回での外来見学プラス希望曜日に合わせた学習プランも用意しております。これらは将来日本東洋医学会専門医を目指されている方への受験資格 取得につながるものです。また具体的な履修期間や方法に関しては、ご希望をできるだけ取り入れて柔軟に対応いたしますので、ご相談ください。
詳細はhttps://www.ho.chiba-u.ac.jp/chibauniv-resident/education/education.htmlに掲載されています。

研修体験

赤芝知己先生
千葉県立東金病院
内科
赤芝 知己 先生
私は栃木のある病院で2年間の研修後、内科の後期研修を受けるために2011年に千葉県立東金病院に赴任しました。東金市のある山武群一帯は千葉の中でも随一の医療過疎地域です。その地で糖尿病を中心とした慢性期疾患を主に経験しましたが、その中で今の西洋医学ではどうにも説明できない、もしくは治療しようがない患者さんを数多く診てきました。そのような患者さんを診療する度に、西洋医学の限界をうすうすと感じていました。

そんな中、2012年の秋にたまたま病院の食堂で現在千葉大学医学部付属病院和漢診療学の准教授である並木先生とお話しする機会を得たのです(当時並木先生は千葉県立東金病院で週一回外来をされていました)。そこでナンパではなく、熱心に勧誘され、実際に和漢診療科の見学に行きました。和漢診療科外来にやってくる患者さんは、西洋医学で治療することが困難な疾患・症状を訴える患者さんが数多く訪れていました。研修医の頃から私は若干漢方医学に興味はあったのですが、西洋医学で治療困難な領域をカバーする漢方医学の研修に、この時大きな魅力を感じたことを覚えています。

2013年4月から週1日1年間和漢診療科で研修し、そこで得た知識を東金病院で実践したところ、これまで治療困難な症状を患う患者さんが次々と元気になっていくではありませんか(もちろん全員ではありませんが…)。「こんなによく診てくれて、しかも症状が良くなってうれしい。先生、ありがとう!」こんな声をたくさん耳にしました。

日頃のつまらないdo処方外来でストレスのたまっている先生方、ぜひ和漢診療科の門戸を叩いてみてください。日々の診療に楽しさが戻るとお約束します。

研修指導スタッフより

赤芝先生、1年間の研修お疲れ様でした。この1年間の研修で先生は非常に多くの漢方知識が得られたかと思います。現在、先生は西洋医学の診断・治療の上でさらに研修で得られた知識を生かした西洋+東洋の治療で治療成績を向上させられたことに我々も非常に嬉しく感じています。一人一人の診療力には限界ありますが、先生のように和漢診療に興味もっていただける仲間が少しでも増え、難病に悩む患者を笑顔に変えられるよう我々も努力してまいります。


千葉大学医学部附属病院和漢診療科研修登録医体験記

岐部道広先生
佐世保市立総合病院
付属宇久診療所
岐部 道広 先生
漢字だらけのセンスのない表題になって申し訳ありません。漢方について殆ど基礎知識も臨床経験のない私がなぜ千葉大学の和漢診療科で漢方の研修をさせて頂いたか、そしてその体験を御報告致します。

私は1年半前までは東北のある県立病院の脳外科医でしたが50歳半ばになり技術体力的に脳外科医現役続行は困難と自己裁定し辞職しました。そして医療過疎地で役立ちたいというほんの少しの志とプライマリーケア医になろうという目的で離島診療に携わることにしました。離島には医師が来ないという事情があり長崎県では2年間契約で1年半勤めれば6ヶ月間は長期研修が可能という採用条件でした。この制度を利用しこの度長期研修を計画しました。

ただし50台後半のロートル医が研修をすることは意外と大変でネット上でいろいろ研修できる病院を探しましたが手懸りがなく困っていたところ千葉大学に開業医や勤務医を対象にした研修登録医制度があることが分かりました。この制度は他大学の附属病院にもありましたが他大学は名ばかりで殆ど機能していないようでした。

で、何科を研修するかを熟考し和漢診療科と循環器内科と消化器内科(腹部エコー)を選びました。自分の苦手分野という理由とこの3つの科はプライマリーケア医に重要と考え選びました。少し気後れしながらも和漢診療科の並木先生に電話をし研修希望の旨を伝えたところ即座に了承して頂き1ヶ月半の長期研修が実現しました。臨床研修する前に初心者が前もって読んでおいたほうがいい本は何かお尋ねしたところ藤平健先生の漢方概論と三潴忠道先生の漢方初心者シリーズなどでしたのでとりあえず千葉に行く前に読み込みましたが座学だけではまだ実際の臨床の場での処方風景が全くイメージできませんでした。

さていよいよ研修が始まりました。前半は小児科志望の卒後研修医1名と短期見学の三国志ファンの筑波大学医学部5年生1名が私の研修同期で後半の1ヶ月間は呼吸器内科志望の研修医1名が同期でした。年齢の差を越え初学者同士が共に学ぶのもいいものでした。朝8時から類聚方広義解説の勉強会、午前中いっぱいか1時過ぎまで外来診察の見学、午後は週2回の回診や病棟カンファランスへの参加あるいは六病位など漢方の基礎の講義または臨床問題の解説、夕方は週1回漢方薬の試飲会、夜は週1回有志の集まりながらで原典を読む会などです。外来診察の見学では見学だけでなく脈診、腹診もやらせて頂きました。月曜から金曜まで異なる先生の外来につき八網、六病位、気血水、五臓いろんな物差しを使って処方を決めていく過程も学びました。漢方には古方派、後世派などいくつか流派があると聞きましたが千葉大学はあまり捉われなく自由な雰囲気でした。

そして医局にはエキス剤がすべて揃っており、風邪や胃腸の調子が悪い時にはすぐ服用し身をもって漢方薬の効果を体験できました。西洋医学とは異なる概念から成る漢方を学んだことで私という人間が学ぶ前とかなり変わったような気がします。

昔読んだヘーゲルの哲学書に学ぶということの本質は学ぶ以前とは別の考え方ができる(止揚)ことみたいなことが書いてありましたがまさにそういう研修体験でした。

優しく個性豊かな千葉大学和漢診療科の各先生本当にありがとうございました。
今後、和漢診療を地域診療に役立てていきたいと思います。

研修指導スタッフより

岐部先生、1ヵ月半の研修お疲れ様でした。先生におかれましては専門領域を極められ、現在離島で高い志の元に医療をされております。今回の漢方研修が先生の医療に少しでも助力になれば嬉しく思います。また、今回の漢方研修を通して先生は学問的の面に留まらず、もっと大きな面でも新発見があったようですね。今後とも西洋医学を元に和漢診療学も取り入れ、より良い治療を目指して頂けたら幸いです。


研修体験記

公受先生
公受 先生
私は循環器内科が専門で、これまで大学病院・関連病院や一般クリニックで診療してきました。社会の高齢化が進む中、多数の併存疾患を有する患者のニーズは広範囲で、中には専門診療科の治療後も自覚症状に苦しむケースは少なくありませんでした。日々の診療の中、漢方薬の可能性に目が向いたのは必然とも言えます。メーカー主催の勉強会は有用でしたが、我流での診療は行き詰まりを見せ、系統だった研修の必要性を痛感しました。初診患者の経過と方剤の選定過程を学ぶには最低3ヶ月間の研修期間が必要であろうと考え、研修期間が柔軟な千葉大学和漢診療科に打診したところ快諾していただきました。日本漢方(古方派)の本流で学びたいとの思いもありました。

研修は、1)毎日朝8時からの抄読会(「黄帝内経」素問、矢数道明著「漢方治療百話」)2)並木先生、平崎先生の外来陪席と初診患者診療、ポリクリ学生指導、3)龍先生・大橋先生の指導による入院患者診療、回診時プレゼンテーション、カンファレンス参加、4)和漢薬煎じ・丸薬作成実習、鍼灸見学、4)漢方研究会や臨床研究への参加等豊富な内容でした。

3ヶ月の研修を通じて書籍や講演会では得られない多くのことを学びました。四診の詳細について丁寧なフィードバックを受けながら習得できました。受診患者のほとんどは専門診療科での治療に満足されておらず、期待を持ち自らあるいは主治医より紹介され、その約8割が当院での和漢診療に満足との調査結果に驚きました。初診患者は早くて数ヶ月で軽快、長いもので数年経過しており、電子カルテの記述を遡ることも勉強になりました。陰陽虚実・寒熱・表裏・気血水・五臓の関係を診療に生かす過程、難治性病態に対する柔軟な和漢診療学的視点の転換、臨床経過に応じた証の再評価と随証治療の重要性を学びました。現在、多くの診療科で漢方治療が普及しつつありますが、治療抵抗例における大学病院和漢診療科の重要性は今後益々増していくものと考えられます。また、生活指導(食事やストレス解消)を重視すること、長い経過と精神的ストレスを有する患者に対する各先生に共通する診療姿勢にも感銘を受けました。

全期間を通して研修に集中できるよう医局全体に温かくサポートしていただきました。3ヶ月間日本漢方のトップランナーに囲まれ、疑問をすぐに解消できる環境に身を置かせていただいたことはこの上ない喜びです。

今後は、私の所属病院や関連病院で和漢診療の適用に努め、地域の漢方医療の充実に微力ながら関わりたいと思います。西洋医学的アプローチの限界を感じたり、病名漢方から一歩抜け出し複雑な病態に取り組みたい先生にとって素晴らしい研修環境であると思います。

研修指導スタッフより

公受先生、3ヵ月間の研修お疲れ様でした。医師として大先輩であり、また、循環器内科、ひいてはオスラー病の日本の第一人者の先生は、学ぶ姿勢と意欲がすばらしくて、短期間にもかかわらず、多くのことを習得され、その速やかな上達ぶりに感服いたしました。西洋医学に精通された先生が和漢診療の技術を身に着けることで今後多くの難病の患者様に福音がもたらされるに違いありません。今後とも学術的な交流をしていきましょう。