和漢診療学講座について

全体

最近、中国を中心として東アジアの伝統医学を国際化しようという動きがあります。ここでは最近のその動向と日本への影響をご紹介します。まずその前に、東アジアの伝統医学について少しご紹介します。なお、漢方の定義いろいろありますが、学会団体の日本東洋医学会では漢方薬、鍼灸治療、指圧、食養などを含んだ医療を定義しています。

東アジアの伝統医学とは

中国、日本、韓国、で主に現在行われている中国の漢以前の医学を起源とする医療体系です。ただし、起源は「漢」の国のころの医学ですが、それが時代により発達・変化した医療体系で、それぞれの国で独自の進化をしています。現代中国の伝統医学と日本の漢方は、親戚ではありますが、全く同じではありません。韓国も同様です。最近、伝統医学の国際化叫ばれていますが、それぞれ違いがあるため、しかし、共通な点も多いので、それらを取りまとめることが考えらられ、伝統医学の標準化が必要になったのです。
日本漢方と中医学の比較(PDF)

東アジアの伝統医学の標準化の実際

それぞれの国の伝統医学をまず標準化することが必要です。日本にはいろいろな流派がありますので、国内での標準化は、単純には難しい状況にあります。

古方派：傷寒論・金匱要略を中心とした医学を実践
後世方派：傷寒論・金匱要略より以降の医学のすべてを実践
中医学：現代中国の伝統医学（TCM）を実践

次に、世界的な国際標準化の方法としては、それぞれの国の共通のもののみを国際標準化する方法(例：ISOの規格)と、すべての国の規格全体を包括する方法がある (例：ICD-11の伝統医学の章での決定法)。しかし、そのほかの方法として、ある国の規格を国際標準とする場合は、その規格が既に多くの国で使われていること、ほかの国の既存の規格に影響を及ぼさないようにする配慮が必要である。

標準化の枠組みには、いろいろのレベルのものがあります。ISO(世界標準化機構)などきわめて厳格な各国の法律にも影響することもあるほどの強制力のある枠組み、WHOなどの世界的な規模の機関からの医療関係者向けの推奨（方針・ガイドラインやベンチマークなど）である自主的な枠組み、世界的な学会（任意組織）によるガイドライン(所属または関連する医療分野の学者や医療者向け)などがあります。目的に応じて、上記のような枠組みが利用されている。

伝統医学の標準化のメリット・デメリット（表）

表に書いたように、メリット・デメリットがあります。

ISO/TC249: Traditional chinese medicineとは

2009年に中国により申請により国際標準化機構（ISO）内に作られた専門委員会。東アジア地域の伝統医療（中医学・韓医学・漢方医学）分野において、国際的な流通促進を目的として生薬や製剤、鍼灸機器（鍼、モグサなど）、および伝統医学で用いる診断機器などのモノ及びそれに関連する医療情報に関する国際規格を定める場です。 2011年の第2回全体会議で5つの分科会Working Group (WG) が設置され実務作業を行っています。

5つの分科会Working Group (WG)

下記のように、5つのワーキンググループで分担して、それぞれ扱っている案件について、国際標準化案を作っています。1つの案件には成立までに2－3年かかるので、膨大な人的・時間的・費用的な労力がかかっています。
それぞれの内容を詳しく知りたい方は、いったん最初に戻って、 WGごとのアイコンの中を見てください。

WG 1: Quality and safety of raw materials and traditional processing（原材料の品質と安全性および伝統的加工法）
WG 2: Quality and safety of manufactured TCM products（TCM工業製品の品質と安全性）
WG 3: Quality and safety of acupuncture needles（鍼灸鍼の品質と安全性）
WG 4： Quality and safety of medical devices other than acupuncture needles （鍼灸鍼以外の医療機器類の品質と安全性）
JWG 5: Joint ISO/TC 249WG3/4- IEC/SC 62D WG: Electromedical equipment （電子医療機器）
WG 5：Terminology and Informatics（用語および情報科学）
JWG 1: Joint ISO/TC 249 WG5- ISO/TC 215 WG: Informatics （情報科学）