研究室について
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研究室について

 私達の研究室では、総勢約20名のスタッフ、大学院生が、免疫記憶の基礎研究を中心に、肺の線維化をはじめとする難治性炎症疾患モデル研究、アレルギー、感染症の基礎と臨床の融合研究となる“治療学研究”を行なっています。
 特に以下の研究テーマに関して注力しています。

(1)難治性炎症疾患の病態解明
 免疫システムの多様な疾患研究への展開について、日進月歩している様々な解析技術を積極的に取り入れることで、難治性疾患における免疫システムが誘導する病態形成の新たな細胞・分子機構の解明を目指します。現在は、1細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析(single cell RNA-sequencing;scRNA-Seq)、1細胞レベルでの網羅的epigenome解析(scATAC-seq)などの網羅的シーケンス技術と超解像度顕微鏡などの先端イメージング技術を組み合わせることで、免疫システムの複雑性の解析を展開し、難治性疾患の病態形成機構の解明を目指しています(図1、図2)。同時に、これまで精力的に研究してきた呼吸器のみならず、食道をはじめとする腸管や眼瞼結膜や角膜などの粘膜臓器、腎臓、肝臓などの実質臓器も視野に入れ、臓器連関に着目し研究を進めます。

   

(2)免疫システムの多層性・複雑性の理解
 これまでに、私たちは、慢性気道炎症が起こった肺組織では、iBALTと呼ばれる異所性リンパ組織が形成されることを見出しました。iBALTは、T細胞、B細胞、樹状細胞の他に、リンパ管内皮細胞などの非免疫細胞から構成されます。また、非リンパ組織に常在し、組織の免疫応答を制御する組織常在性記憶T細胞と呼ばれる特殊な細胞集団が、異所性リンパ組織中で維持されるということを報告しました(図3)。
 これらの研究成果を踏まえて、私たちは、“組織炎症記憶”という現象に注目しています(図4)。“組織炎症記憶”は、異所性リンパ組織や組織常在性記憶T細胞を通じて、組織が蓄積する様々な炎症の情報です。これは、SARS-CoV2などの病原性微生物の再侵入防御に対しては、重要です。一方、過剰な炎症反応によって“組織炎症記憶”が病的に蓄積することは、病気の慢性化・難治化の原因になるのではないかと考えています。そこで、未だ不明な点が多い組織炎症記憶形成機構の解析を進めております。

 

(3)免疫システムと他の生体システムの連関
 免疫システムと他の生体制御システムとの連関が、生体の恒常性維持及びその破綻による難治性疾患発症に深く関与することが近年明らかになってきました(図5)。難治性疾患のより深い理解には、免疫システムを中心とした複数の生体制御システムの多層的な連関の解明が必須になると思います。これまで、私たちは免疫システムと神経システムの連関が、慢性アレルギー疾患の難治性病態形成に関わる一端を研究してきました(図6)。今後は、神経システムに加えて、内分泌・代謝システムなど他の生体制御システムと免疫システムの連関についての研究へ発展させていきます。