治療・社会復帰支援研究部門
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研究内容

 治療・社会復帰支援研究部門では、精神障害者の治療・社会復帰支援をはじめとした様々な課題を解決するために、疫学研究・基礎研究・臨床研究・政策研究等を進めております。研究手法としては、社会調査、オピニオン調査から、薬物療法・精神療法等の臨床的介入まで、多岐に渡ります。また、司法精神保健の発展のために、研究者の育成や、臨床家の教育にも力を入れております。司法精神医学分野、周産期メンタルヘルス、精神科入院者の地域移行・定着・就労支援など、今日、精神科医療において強い関心事となっているアンメットメディカルニーズに対して、生物学的・薬理学的基礎研究、臨床疫学、臨床研究、アクションリサーチなどの手法を用い、知見の収集、新たな治療法・支援方法の開発と啓発・普及、法システム構築、施策提言を図っており、昨今の関連法改正や診療報酬改定、医療保健福祉連携サービスモデルの学術的バックグラウンドとして各方面から高く評価されております。

措置入院及び退院後支援のあり方に関する研究(椎名)

 厚生労働行政推進調査事業費補助金 障害者対策総合研究事業の一環として、精神保健福祉法に基づく措置入院の適正化に関する研究を実施しています。2022年度においては、平成30 年に公表された「地方公共団体による精神障害者の退院後支援ガイドライン」の運用状況に関する全国自治体調査を行うとともに、前年度に開始した措置診察にあたり必要とされる知識及び技術の効率的な習得方法に関する全国の精神保健指定医に対するアンケート調査の結果をまとめました。

 

※措置入院及び退院後支援のあり方に関する研究

 

鑑定入院アウトカム評価指標の確立と精緻化に関する研究(椎名)

 2005年に施行された医療観察法により、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者は、鑑定入院を経て裁判所の審判により特別な医療を提供されることになりました。しかし、この鑑定入院中の処遇や治療内容等をどのように評価し、質の向上を図るかが課題となっています。我々は鑑定入院処遇の質を事後的に評価できる仕組みを確立させるための研究を進めています。

 

※成果報告書(完全版)

 

青年発達障害患者に対するグループ認知行動療法による就労支援効果の検証(椎名)

 青年期まで診断されずにいた発達障害者の中には、就労に困難を抱える方が少なくありません。

 我々は、千葉大学医学部附属病院と協働して、発達障害を有する患者さんの就労支援のためのグループ認知行動療法パッケージを作成しました。

 詳しくは千葉大学医学部附属病院精神神経科外来にお問い合わせください。

 

ギャンブル障害患者に対するブロナンセリン療法の安全性および効果に関する臨床試験(椎名)

 競馬やパチンコなどのギャンブルをやめられなくなってしまうギャンブル障害を有する患者さんに対し、日本で開発された抗精神病薬であるブロナンセリンの安全性および効果を確かめるための臨床研究を、千葉大学医学部附属病院と協働して実施しました。

 

措置入院制度の運用実態把握およびその質の向上のための研究(椎名)

 精神保健福祉法では、自傷他害のおそれのある精神障害者に対し、都道府県知事等の命令により精神科病院に入院させる措置入院制度が規定されています。

 我々は、措置入院制度の運用実態を調査し、地域間格差等を明らかにするとともに、より適切で効率的な制度運用およびフォローアップ体制等の確立に向けた取組みを行っています。

 

 「精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究」(研究代表者:国立研究開発法人精神・神経医療研究センター 藤井千代)の分担研究「措置入院者の地域包括支援のあり方に関する研究」(研究分担者:椎名明大)における検討内容を踏まえて、平成30年3月27日、厚生労働省から社会・援護局障害保健福祉部長通知

・「措置入院の運用に関するガイドライン」について(障発0327第15号)

・「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」について(障発0327第16号)

が発出されました。

 両通知は下記リンクからダウンロードが可能です。

 

「措置入院の運用に関するガイドライン」(概要)

「措置入院の運用に関するガイドライン」(本文)

「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」(概要)

「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」(本文)

 

電気的自動除細動器の埋め込みに伴う不安・抑鬱の評価(椎名)

 近年、致死性不整脈に対する予防介入として、電気的自動除細動器の埋め込み術が普及しつつあります。

 しかし、埋め込み術を受けた患者さんの中には、発作や誤作動をおそれから、不安・抑鬱といった精神症状を呈する方も少なくありません。

 我々は、千葉大学医学部附属病院精神神経科及び同院循環器内科と協働して、埋め込み術を受けた患者さんへのインタビューを行い、埋め込み術後のリスク評価を行っています。

 

精神科薬物療法の適正化(渡邉)

 精神科ユーザーの生活の質に負の影響を生じる多剤大量併用の是正や副作用被害に関する調査・研究・提言を行っています。自治体や直接精神科ユーザーの声を集めて発信しているNPO法人と協働し、一般の方々のメンタルヘルスリテラシーの啓発向上もお手伝いしております。私が執筆・講演した当事者家族向け・一般向けの様々なプロダクツの詳細につきましては地域精神保健福祉機構HPをご覧ください。

 

精神科多職種協働モデル(渡邉)

 新しい精神科入院治療の多職種協働モデル(SACHICO)の開発・有用性の検証を行っています。総合病院精神科で実装した実績や成果を生かし、単科精神科病院での導入を病院全体のプロジェクトとして行っております。(本事業は平成26年度三菱財団研究助成をいただき実施しました)

 

周産期メンタルヘルス(渡邉)

 母子保健と精神保健の連携協働は、女性や子供が生活しやすい社会をつくるために必須のテーマです。しかし、この分野の良い連携モデルはいまだ定まっていません。県内の子育て世代の多いいくつかの自治体の行政当局や大学病院と協力し、保健師や助産師、産婦人科医等の専門職と連携する情報共有システム、専門支援システムを構築しております。また、周産期メンタルヘルス学会ガイドラインを作成している途中で、専門職間の円滑な協働や協同意思決定に有用な診療ガイドを準備しているところです。詳細は、周産期メンタルヘルス学会HPをご覧ください。