フォーラムについて

プラズマ医療・健康産業フォーラム設立趣意書 Life Innovation by Plasma(Technology) -Forum: LIP-Forum

大阪大学大学院 工学研究科・教授 浜口 智志
(独)産業技術総合研究所 糖鎖医工学研究センター・チーム長 池原 譲
(独)産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門・研究グループ長 榊田 創

日本が開発を先導してきたプラズマ発生・制御技術は、半導体・電子機器、ナノデバイス、生活用品の加工製造で欠かせない技術ですが、近年、治療機器や医用材の加工製造にも急速に取り入れられるようになっています。医用材の分野では導入が早かったため、コンタクトレンズや留置カテーテル、留置ステント等のヘルスケアから高度医療を支える医材の製造加工で、不可欠な基幹技術となっています。この分野での更なる技術進歩は、より生体親和性の高い医材製造や低コスト幹細胞培養技術に反映され、近く実用化する医療を支える基盤技術になると思われます。

日本を中心とした放電技術の近年の進歩は、大気圧下で室温程度の「熱くない」プラズマを発生させる事を可能とし、これによって、プラズマの生体への直接照射を実現しました。既製の治療機器による処置に比べて、プラズマ照射は、創傷治癒、がんの増殖制御、血液凝固や止血、血管新生の局面で有用で、分子メカニズムを含めた基礎研究が精力的に進められています。プラズマと生体の交互作用の解明はその優位性を明確にするため、今後の治療デバイス開発をさらに加速し、これによって臨床へのトランスレーションが進むであろう事は明らかだと思われます。

我が国は、医学・生物学分野の多くの領域で世界最高レベルにあります。糖鎖研究もその一つで、アンメットメデイカルニーズに応える疾患糖鎖バイオマーカーの開発を先導してきました。残念な事に、現在の臨床検査技術の技術的な制約のため、臨床での実用化が進んでいません。しかし、プラズマ技術を仲立としてナノデバイスの利用を推進すると、その検出評価に適した近赤外光の検出モジュールを利用出来るので、その実用化が大きく進みます。このようにライフサインス領域には、プラズマ技術と結びつくことで、実用化・ライフイノベーションの実現に至る研究シーズが数多く存在している事を世界中の人々が気づいている事と思います。実際、国外に目を向けると、プラズマ関連技術は次世代の医療・健康産業基盤を担うと位置づけられ、激しい研究開発競争が展開されています。特にドイツや米国を中心とする欧米諸国では、国の強い支援をうけて、基礎研究から実用化へと進む研究体制の構築が強力に推進されているのです。

このような状況にある今、日本のプラズマ発生・制御技術を医療・健康産業界へ展開し、真に望まれる医療機器と医用部材の開発と実用化するための体制が必要な事は明確です。このため私達は、企業、医療機関、官庁、公的研究機関および大学等と連携し、情報交換、基礎研究、技術開発、実用化支援等を通じてイノベーションを実現するコミュニティ「プラズマ医療・健康産業フォーラム(Life Innovation by Plasma(Technology) -Forum: LIP-Forum」を、ここに設立します。

2010 年 11月 5 日