千葉大学大学院医学研究院
画像診断・放射線腫瘍学
千葉大学病院
放射線科
放射線治療は放射線をあてることによって効果的にがん細胞をたたく治療です。使われる放射線はレントゲン写真の撮影で使われるX線と似ていますが、それと比べるととても強いエネルギーをもち、しかもそれを長い時間にわたってあて続けます。
放射線を病気にあてる方法としては、①体の外から放射線をあてる外照射(がいしょうしゃ)と、②放射線を出す小さな線源を体の中に入れる内部照射(ないぶしょうしゃ=小線源治療)があります。よく行われる外照射では、通常土日祝日をのぞいて週5回、毎日こつこつと治療をおこないます。期間は1日でおわることもあれば約2ヶ月におよぶものまで、病気の種類や進行具合,患者様の状態等によって様々です。外照射と内部照射を組み合わせて行うこともあります。
放射線治療では、熟練した放射線治療医が丁寧に治療の計画を立てることによって、放射線を腫瘍に集中的にあてながら、健康な臓器にあたる放射線の量を最小限にとどめることが可能になります。病気から離れた部分の臓器には放射線があたらないので影響はありません。たとえば、頭以外の場所に放射線をあてても,頭髪が抜けてしまうようなことはありません。
放射線治療は手術・化学療法(抗がん剤)とならんで、がん治療の3本柱と呼ばれています。放射線治療だけで治るがんもありますが、多くの場合手術や化学療法と組み合わせて治療を行うことになります。
放射線治療の出番は,がんの根治を目的とした場面に限りません。副作用を最小限に抑えた少ない線量の放射線で,痛みや出血といった,がんに伴う諸症状を和らげる治療も多く行われています。
欧米ではがん患者の50%以上が放射線治療を受けています。一方わが国では25%程度しか受けていません。これは本来放射線治療を受けるべき患者様の多くが、実際には放射線治療を受けていないことを意味しています。ただし放射線治療を受ける患者様の割合は年々増加しており、将来的に日本でも放射線治療の利用率が欧米に近づくと推定されています。
令和4年には約700名の新たな患者様に放射線治療を受けていただきました。なかでも乳がん、頭頸部がん,肺がん,子宮頸がん,前立腺がん等患者様を数多く治療させていただいています。このうち約70%程度の患者さんはがんの根治を目的とした治療の一環として放射線治療を受けていただきました。当院では、全ての患者さんにCTを用いた治療計画を行い、3次元的に線量分布 (放射線の当たり具合) を検討しています。私共は適切な放射線の使用を心がけ、患者さんに出来る限り利点があり、欠点の少ない(副作用の少ない)方法を工夫しております。
外照射では、小さな病巣にピンポイントで放射線を当てる定位放射線治療や、正常組織の被ばくを減らすために複雑な線量分布を実現するための強度変調放射線治療(IMRT)の施設認定を受けております。また病気や臓器のずれをミリ単位で修正するための画像誘導放射線治療(IGRT)といった高精度な治療を日常的に行っています。
患者さんの実体験も交えながら、放射線治療の治療法や特長をわかりやすくお伝えする動画が公益社団法人日本放射線腫瘍学会で製作されております。 動画「見て聴いて知る!がんの放射線治療」でご視聴ください。