診療
小児科免疫アレルギーグループは、さまざまな免疫応答の異常に基づく疾患を診療の対象としています。具体的には、本来無害なものに過剰に反応してしまう「アレルギー疾患」、病原体を排除できない「免疫不全症」、自分自身を攻撃してしまう「自己免疫疾患」、そして免疫反応のひとつである炎症が過剰に起こってしまう「自己炎症性疾患」の患者さんを診療しています。免疫異常の理解に基づいて、これらの疾患の早期診断、予防、そして治療を行っています。千葉県こども病院アレルギー膠原病科、国立病院機構下志津病院アレルギー科とも協力して診療をしています。
診療している疾患と関連情報
アレルギー疾患全般
気管支喘息
アトピー性皮膚炎
食物アレルギー
アレルギー性鼻炎
膠原病・自己炎症性疾患(若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、家族性地中海熱、Blau症候群など)
免疫不全症候群(X連鎖無ガンマグロブリン血症、分類不能型免疫不全症、高IgE症候群、重症複合型免疫不全症、X連鎖リンパ増殖症候群など)
主要対象疾患
- 気管支喘息
気管支ぜんそくは、呼吸をするときにヒューヒュー、ゼイゼイ(喘鳴)という音が聞こえる呼吸困難を繰り返す病気です。気管支ぜんそく患者の気管支では症状がない時でも慢性的に炎症が持続しています。ダニ、ハウスダストなどのアレルゲン、ウイルス感染、運動などが原因となり発作を引き起こし、喘鳴や呼吸困難などの症状が出現します。
気管支ぜんそくの治療は慢性的にある炎症を抑える治療を中心に行い、発作を起こさないようにします。また、環境整備など発作の誘因を除去してあげる必要もあります。
気管支ぜんそくの治療については「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2012」が出版されています。このガイドラインには当科の河野教授(2013年退官)、下条准教授(現教授)も作成委員として関わっております。
当科外来ではこのガイドラインをもとに喘息カレンダー、ピークフローモニターなどを用いてぜんそく治療の管理を行っております。また、より良い喘息治療につなげるための研究も同時に行っております。
- アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、強い痒みを伴う湿疹が慢性・再発性に持続する疾患です。 小さいお子さんをもつ保護者のかたのなかには、お子さんがアトピー性皮膚炎ではないかと不安に思われている方も多いと思いますが、現在では診療ガイドラインが整備され、アトピー性皮膚炎かどうかについて診断基準によって乳幼児でも比較的明確に診断することができるようになりました。そして診断後の標準的治療についてもガイドラインに示されています。
アトピー性皮膚炎は、慢性の疾患であるため治療にはやはりある程度の期間が必要となりますが、適切な治療によりコントロールが可能で、患者さんやご家族のQOLは大きく改善します。いたずらに診断を先延ばしにすることなく適切な治療を受けることが重要です。
千葉大小児科では、上記ガイドラインの作成に中心的に携わるとともに、腸内細菌叢(プロバイオティクスなど)や皮膚生理機能(皮膚バリア機能、ブドウ球菌定着)、また発症予防などについて臨床的・基礎的研究を行っています。
- 食物アレルギー
食物アレルギーは、特定の食物に対する免疫反応により、皮膚の症状(赤み・じんましん)、呼吸器の症状(咳・ゼイゼイ・呼吸苦)、消化器の症状(嘔吐・腹痛・下痢)、循環器の症状(血圧が下がる)などの症状が起こる疾患です。
診断のためには,まずは外来において食物への暴露と臨床症状発現の関係についての詳細な問診を行い,原因食物の推定をおこないます。アレルゲン特異的IgE抗体、皮膚テスト、好塩基球ヒスタミン遊離試験などの検査は診断の参考になりますが、確定診断のためには、疑わしい食物を経口負荷して症状を確認する食物経口負荷試験が必要です。当科では経口負荷試験は基本的に入院での検査として行っています。食物摂取後の運動時に症状が出る方の場合には食物摂取に加え運動負荷試験を行います。
診断が確定した後は、原因と診断された食品の必要最低限の除去を行いながら、定期的な検査を行います。乳幼児の即時型食物アレルギー(じんましんなど)の場合には、6才までに約80%の方が寛解する(摂取しても症状がでなくなる)ことが知られています。寛解の確認のためにも食物負荷試験を行います。
症状が出る方も、症状が誘発される食品量(症状誘発閾値)を評価して、外来あるいは入院で少量から摂取を行い、耐性獲得をめざす治療(経口免疫療法)を臨床研究として行っています。
- 膠原病・自己炎症性疾患
小児の膠原病は、成人とは異なった小児特有の問題点を考えながら、必要に応じて他科と連携しながら診療を行う必要があります。私たちは若年性特発性関節炎(JIA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、若年性皮膚筋炎・多発筋炎、混合性結合組織病(MCTD)、シェーグレン症候群をはじめとした小児の膠原病の診療を行っております。治療として、ステロイド薬を中心とした免疫抑制療法のほか、若年性特発性関節炎に対し、「抗インターロイキン6レセプター抗体(トシリズマブ)」や「TNF阻害薬(エタンネルセプト)」をはじめとした生物学的製剤による治療も行っております。また、近年明らかになってきた周期的な発熱を繰り返す自己炎症性疾患についても他大学と協力し、診断とその後の外来治療も行っております。
- 免疫不全症候群
体を細菌やウイルスなどから守る「免疫」という働きに、生まれつき問題がある様々な病気をまとめて、「原発性免疫不全症候群」と呼んでいます。免疫グループでは、X連鎖無ガンマグロブリン血症や分類不能型免疫不全症などの抗体産生不全症(IgGなどのガンマグロブリンが低下する疾患)、高IgE症候群、X連鎖リンパ増殖症候群など、様々な原発性免疫不全症の診断および治療を行っています。また、全国的な免疫不全症候群の症例データベース研究(PIDJ)を通じて、他大学との協力のもとに遺伝子診断を進めています。
お子様の免疫力が弱いのではないかとご心配な方は、原発性免疫不全症を疑う10の徴候(http://pidj.rcai.riken.jp/10warning_signs.html)をご確認の上、かかりつけの先生よりご紹介をいただいてください。
メンバー
名 前 | 役 職 | 専門医・指導医・学位 |
山出 史也 |
助教 |
小児科専門医・認定指導医、アレルギー専門医・指導医、リウマチ専門医・指導医、医学博士 |
中野 泰至 |
助教 |
小児科専門医・認定指導医、アレルギー専門医、医学博士 |
佐藤 法子 |
医員 |
小児科専門医 |
加藤 大吾 |
大学院生 |
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佐藤 裕範 |
大学院生 |
小児科専門医 |
緒方 仁志 |
非常勤医師 |
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