千葉大学大学院医学研究院
脳神経外科学
千葉大学病院
脳神経外科
千葉県救急医療センター脳神経外科
中村 弘
頭部は脳、硬膜、頭蓋骨、骨膜、皮膚、血管などでできていますが、重症頭部外傷とは、外傷によって起きた重篤な脳損傷(=脳外傷)のことです。つまり、頭の表面の大きなコブや出血・頭蓋骨骨折のありなしとは別です。図-1の例は重症頭部外傷ではありません。逆に外見上大きなキズはなくても、頭部へ強烈な衝撃や脳の揺さぶり・ゆがみなどの外力が作用すれば、脳損傷が発生して重症頭部外傷となります(図-2)。
CTスキャンで血腫(けっしゅ)の出現や増大が原因と診断されれば、緊急開頭手術が必要になります。急性硬膜外血腫(図-3)では回復が期待できますが、急性硬膜下血腫(図-4)や脳挫傷・脳内血腫の増悪例では救命すら困難な場合があります。一見大丈夫と思われても重症化することがあるということです。
図-5上は当施設のデータですが、国内の複数施設のデータを集積した日本頭部外傷データバンクのデータも全く同様の二峰性の分布を示しています、やや古いものですが、図-5下の米国の年齢分布と比べると、年齢分布に大きな違いがあることが分かります。
ここには提示しませんでしたが、1980年以後の年齢分布の推移をみますと、人口の高齢化とほぼ同じペースで高齢化しています。
受傷原因の多くは交通事故ですが、40代後半以上では転倒・転落によるものが増加します。近年、高齢者の脚立からの転落事故が増加 しているようです。また、交通事故では高齢者の自転車による受傷の増加が目立ちます。 1980年以後の受傷原因の割合についても推移を検討していますが、大きな変化はないようです。
千葉県救急医療センターは救命救急センターとして、重症多発外傷・重症頭部外傷を24時間、365日、積極的に受け入れて治療を行っています。頭部単独外傷でも脳外科専門医だけでは治療は成立しません。麻酔科、集中治療科、外科、整形外科、心臓血管外科、形成外科などの医師との密接な連携のもと、頭蓋内圧管理、脳低体温療法などの集中治療を行って、患者さんのよりよい回復を目指しています。