千葉大学大学院医学研究院
脳神経外科学
千葉大学病院
脳神経外科
堀口 健太郎
眼窩は、頭蓋骨と顔面骨により形成される四角錐型のくぼみで、視神経管と上眼窩裂を通して頭蓋腔とつながっています。上壁は頭蓋腔と、内側壁‐下壁は副鼻腔(篩骨洞・上顎洞)と、外側壁は眼窩外と接しています。眼窩内には眼球、外眼筋、各種神経とその鞘、涙腺、脂肪等の組織が含まれ、それぞれの組織から良性あるいは悪性腫瘍が発生します。また、隣接する副鼻腔や頭蓋内に発生した腫瘍が眼窩内に進展することもあります。
良性腫瘍 : 神経鞘腫、髄膜腫、神経線維腫、海綿状血管腫、涙腺腫瘍、視神経膠腫、類皮腫、孤立性線維性腫瘍、肉芽腫、偽腫瘍、類表皮腫、甲状腺眼症
悪性腫瘍 : 悪性リンパ腫、肉腫、転移性腫瘍
血管病変 : 静脈瘤、リンパ管腫
自覚症状 : 視力障害、視野障害、複視、眼痛、頭痛、羞明、流涙
他覚症状 : 眼球突出、眼位異常、眼瞼下垂、眼瞼腫脹
腫瘍の発生部位や大きさによって症状は異なります。腫瘍が、外眼筋によって形成される四角錐の内部にあるか外部にあるかによっても症状が異なり、外部では眼球突出、内部では視機能障害が主徴となります。治療上最も問題になるのは視機能です。手術の時期を逸すると視機能障害が後遺し、場合によっては失明することもあります。片眼性の視力視野障害は気づかずに進行していることが多いので、少しでも異常を感じたら早期の検査が必要です。
左眼窩尖端部腫瘍、病理診断は神経線維腫。
左視力、視野障害を主訴として来院した。摘出手術後視力、視野障害は正常化した。
外眼筋四角錐内悪性リンパ腫
右視力・視野障害、眼球突出を主訴として来院した。摘出手術後視機能は改善し、眼球突出は消失した。骨条件術後CTでは、眼窩壁が整復され術前と同じ形状を維持していることがわかる。