千葉大学大学院医学研究院
耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学
千葉大学病院
耳鼻咽喉・頭頸部外科
1907年に創立された当教室は、100年以上の歴史を有し、千葉県を中心とした患者様の治療と日本・世界に誇れる新規医療の開発に当たっています。教室名に示される耳鼻咽喉科学は、子供からお年寄りに至るヒトの聴力、嗅覚、発声、嚥下などの生体機能に関する疾患を扱い、その機能異常はQOLの低下につながるため、幅広い専門性を必要とする学問です。一方、頭頸部腫瘍学は整容面だけでなく、生体機能にも障害を来たす悪性腫瘍も多く取り扱う学問であり、当教室は脈々と受け継がれた頭頸部外科治療の開発拠点の一施設として常に発展しています。
特に頭頸部悪性腫瘍に対しては、高齢化が進む中で、低侵襲かつ高い根治性を有する治療開発を進めています。外科手術においては、鼻・副鼻腔および咽頭・喉頭の悪性腫瘍、更に甲状腺腫瘍に対して内視鏡下手術を導入しており、殊に頭蓋底に浸潤した腫瘍に対する経鼻内視鏡下手術では安定した良好な治療成績が得られています。また、多様な組織型を有し診断が難しい唾液腺腫瘍、特に悪性腫瘍に対しても確実な診断の下に、顔面神経の再建を含めた根治的手術を成し遂げ、治療成績は日本のトップレベルを維持しています。
一方、早期に症状が出づらいという特徴から、悪性腫瘍の進行例も多く、外科的治療だけでは根治性が得られることが難しいため、放射線治療や新規の抗がん薬治療を如何に有効に組み合わせることで、高い治療成績を維持しながら喉頭などの機能温存が図れるかを追求し続けています。
当教室のもう一つの特徴として新規治療薬の開発を目的とした種々の研究があります。千葉大学の免疫学教室および理化学研究所との共同研究により強力な抗腫瘍作用を有するNKT細胞を用いた免疫細胞療法を頭頸部悪性腫瘍に対して展開しています。また、分子腫瘍学教室および千葉県がんセンター細胞治療開発研究部の協力の下に、鼻副鼻腔癌、口腔・咽頭癌および唾液腺癌などの遺伝子解析を進め、新たな遺伝子治療薬の発掘にも挑んでいます。更に、頭頸部腫瘍だけでなく、アレルギー疾患の治療、特にスギ花粉症を含むアレルギー性鼻炎や難病指定を受けた好酸球性副鼻腔炎の新規治療開発も基礎・臨床の両面から研究を進めています。
最後になりますが、私が考える当教室の大きな使命は、優秀な医師の育成です。これまでに述べた診療と研究を確実に進めて行くためには、情熱を持って立ち向かえる医師が必要です。更にここで表現した『優秀な』とは、「優れ秀でた」かつ「優しさに秀でた」医師を意味します。この教室においては、優しさと情熱を兼ね備えた医師をより多く育成することを強い信念のもとに推し進めています。