婦人科のご案内

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卵巣がん

 卵巣がんの多くは、無症状のまま病気が腹腔内に広がり、症状が出て婦人科に受診するときには、すでに進行がんになっている場合が多いがんです。千葉大学ではこのような進行卵巣がんの治療を専門とするチームが存在します。われわれは世界でトップレベルの医療を提供します。わたしたちにあなたの手術をさせてください。

千葉大学での進行卵巣がんに対する治療の特徴

 進行卵巣がんにおいて大切なのは、手術によってがんを完全切除することです。しかし、進行卵巣がんの患者さんでは横隔膜や脾臓などお腹の上部にまでがんが広がっていることが多く、がんを完全切除するためには上腹部手術(横隔膜切除や脾臓摘出術、肝部分切除術)や腸管が必要になります。しかしすべての「婦人科腫瘍専門医」が、これら手術手技をおこなえる状態になっていないのが日本の現状です。

 私たち千葉大学では、2008年より卵巣がん専門チームが構成され卵巣がんの治療に当たっています。われわれのチームでは、「婦人科腫瘍専門医」により消化管切除をはじめ、上腹部手術(横隔膜切除や脾臓摘出術、肝部分切除術)や腸管切除をおこなうことで、卵巣がんが治り、患者さんの生活の質の向上をめざした医療を提供しています。卵巣がんを完全摘出する手術手技を私たち婦人科腫瘍専門医でおこなうことで、最適な切離ラインを決定することができ、かつ消化器外科や肝臓膵臓脾臓外科医師と手術日程の調整をすることなく手術計画を立てることができるので、手術日の遅延がありません。

 2007年以前と2008年以降2012年までの治療成績を比較してみました。

 完全切除率は43%から78%に増加しました。それに伴い、生存期間(中央値)は38.1ヶ月から68.5ヶ月に延長しました。手術術式スコアは手術の複雑さを示しています。直腸切除や横隔膜・脾臓摘出などにより手術の複雑さは4倍に上昇しました。なお、この間に手術に関連して亡くなった患者さんはいませんでした。

 進行卵巣がんの場合、治療方法には、手術先行と化学療法先行の2つの方法があります。卵巣がんガイドラインでは、「原則として手術先行ですが、完全切除が困難と判断された場合は化学療法先行」となっています。私たちは、完全切除が可能な場合は手術先行を選択し、完全切除が困難な場合は、無理をして手術を先行せず、化学療法を先行し、化学療法後に完全切除を目指します。そうすることで、無理なく複数の手術を組み合わせて完全切除が可能となり、術後の合併症が少なくなります。

 化学療法を先行して無理のない手術をおこなうことで、多くの患者さんが、完全切除の恩恵が得られるようになりました。私たちが卵巣がんⅢC・Ⅳ期(2008-2016年)の患者さん203人(手術先行85人、化学療法先行118人、完全切除 136人 80%)におこなった手術術式は、

 付属器切除・子宮全摘 192例(95%) 
 大網切除 195例 (96%)
 骨盤腹膜切除 103例 (68%)
 横隔膜切除122例 (60%)
 膵尾部合併脾臓摘出 76例 (37%)
 直腸切除および再建 139例 (68%)
 結腸切除 68例 (33%)
 小腸切除 9例 (4%)
 肝部分切除 9例 (4%)
 胃部分切除 6例 (3%)
 腎・尿管切除 6例 (3%)
 骨盤・傍大動脈リンパ節郭清 199例 (98%)

でした。患者さんひとりひとりのお腹の中の「がんの状態」に合わせて、これらの複雑な術式を組み立てます。

 患者さんが卵巣がんの根治術を受けるチャンスは1回しかありません。早期卵巣がんの治療は、日本の施設間では大きな差がないと思われます。それは子宮全摘、両側卵巣切除、大網切除、傍大動脈リンパ節切除、骨盤リンパ切除に限られているからです。しかし、残念ながら、早期がんでなく進行がんであった場合、先ほど説明した複雑な手術が必要になります。この場合、たとえ遠方であっても、千葉大学で治療・手術を受けることを勧めます。

活動報告

【2017年10月】

 私たち卵巣がんチームの治療成績が欧米の婦人科腫瘍雑誌(Gynecology Oncology)で発表されました。

Survival and safety associated with aggressive surgery for stage III/IV epithelial ovarian cancer:
A single institution observation study.
Gynecol Oncol. 2017 Oct;147(1):73-80. 2017 Aug 8.. PMID:28800941
Tate S, Kato K, Nishikimi K, Matsuoka A, Shozu M.

 卵巣がん治療専門チームを立ち上げて拡大手術を導入した。 手術術式スコアは2点から8点に増加した。 完全切除率は43%から78%に増加した。 生存期間の中央値は38.1ヶ月から68.5ヶ月に延長した。 術後3か月以内の死亡した患者さんはいなかった。

Aggressive surgery was implemented in our "non-high volume" hospital.
Median [range] surgical complexity score of surgery increased from 2[2-4] to 8[6-11].
Complete resection rate increased from 43% to 78%.
Median overall survival increased from 38.1 months to 68.5 months.
No patient died within 12 weeks of surgery.

【11月30日(木)~12月2日(土)】

The 5th Biennial Meeting of Asian Society of Gynecologic Oncology (ASGO 2017) Surgical Film Exhibitionの10演題中3演題が千葉大学から選ばれました。

進行卵巣癌に対する手術(楯真一)...

【2018年10月18日】

第56回日本癌治療学会が横浜で開催され、錦見恭子助教が超広汎子宮全摘術を用いた骨盤壁に強固に癒着する卵巣癌の摘出方法について口演し、優秀演題賞に選ばれました。

医療関係者の方へ

 私たち卵巣癌治療チームの手術を見学希望の医療関係者は随時見学可能です。
 希望の方は、楯まで連絡ください。

 連絡先:千葉大学医学部 産科婦人科学教室(043-222-7171、内線:5312)

 2017年手術見学者
 4月28日 横浜市立市民病院(吉田浩先生、古郡恵先生)