千葉大学大学院医学研究院
産婦人科学講座
千葉大学病院
産科・婦人科
2008/06/06
千葉大学医学部附属病院婦人科では、進行卵巣癌や子宮頚部バルキー腫瘍など難易度の高い手術を要する患者さんに最高の医療を提供するために、手術専門医によるチームを形成しています。 この手術チームの実施するアドバンスト研修コースの参加者を募集しています。
われわれの手術チームは、日本の婦人科癌の手術成績のさらなる向上をめざしています。そのために、以下の2つの活動を行います。
第1に、“腕のたつ”婦人科外科医を育成することです。
進行卵巣癌にoptimal cytoreductionを実施するためには、婦人科臓器以外の消化器や泌尿器の合併切除が不可欠です。この研修コースは、進行卵巣癌における他臓器合併切除を術者として完遂できるようになることを目的にしています。
骨盤自律神経を温存して広汎子宮全摘術を実施するには、骨盤内の膜解剖の理解が必要です。われわれは、骨盤内の膜構造をふまえ、切除すべき組織と温存すべき骨盤自律神経を明確に切り分ける広汎子宮全摘術を施行しています。本コースでは、この術式を修得することが可能です。
第2に、新たな術式の開発に取り組み、その成果を世界に向けて発信していくことです。
新たな手術手技の開発に取り組み、手術成績の向上を目指します。婦人科腫瘍外科医療の進むべき方向を常に意識しながら、その成果を世界に向けて発信していきます。
卵巣癌の治療の2本柱は、手術療法と術後の補助化学療法です。 化学療法については、標準的化学療法(タキサンとプラチナ製剤の併用療法)が確立しています。このレジメに従う限り、補助化学療法による治療成績に大きな差はないはずです。
これに対して、手術では可能な限り腫瘍を摘出するoptimal cytoreductionが行われます。Optimalと一口にいっても、実際にどれくらいの切除が行われるかは、施設や医師個人により大きな違いがあります。卵巣癌の50%以上が進行期III 期・IV期の予後の悪い進行癌ですが、これらの症例でもoptimal cytoreduction が行われることにより予後が改善することが示されています。この場合の手術は、高いレベルの専門医師により実施されることが大切であることが分かっています。
Optimal cytoreductionを行うには、婦人科臓器以外に消化管・膀胱や尿管・横隔膜・腹膜なども合併切除が必須です。子宮や卵巣の腫瘍が直腸と一塊となっている場合、子宮卵巣と直腸とを分離して別々の術者により切除するよりも、両者をen blocに切除するほうがよい場合がほとんどです。そこで、この合併切除を標準術式の一つとすることにより、術前に治療戦略を立て、より安全にかつ確実にoptimal cytoreductionを完遂できることになります。
われわれの手術チームでは、進行卵巣癌(III期・IV期)の初回手術では60%に消化器合併切除を実施しており、optimal cytoreduction率が80%を越えています(他施設の多くが10-40%と報告しています)。
千葉大学での手術チームでの基本研修期間(2-2.5年)と、関連施設での発展研修期間(0.5-1年)を基本とします。研修の進み具合により、延長や短縮も可能です。大学での研修から始めますが、実際のプログラム内容は個別に相談しながら策定します。
A. 周術期管理 消化器手術を前提とした腸管処置、栄養管理、血栓対策など。
B. 処置手技 中心静脈カテーテル挿入、中心静脈ポート留置、胸腔ドレーン挿入、イレウス管挿入など。
C. 手術手技 人工肛門造設、小腸・結腸部分切除術、尿管部分切除・神経温存広汎子宮全摘術、骨盤リンパ節郭清、傍大動脈リンパ節郭清、骨盤内臓全摘術など。
千葉大学病院において、手術チームの一員として診療に参加し、術前診断、手術手技、術後管理などについて研修を行います。中心静脈カテーテル挿入、胸腔ドレーン挿入、イレウス管挿入などの手技に慣れていなければスタッフの指導のもとに習得します。人工肛門造設や小腸・結腸部分切除などより消化管手術を開始し、基本的な消化管吻合などの手術手技を習得します。また、尿管部分切除・再吻合などの手術手技を習得します。
1年目での経験をふまえ更なるスキルアップを図ります。症例数が多く優れた指導者がいるしかるべき基幹病院であり、なおかつ婦人科医がローテーションするのに相応しい病院の消化器外科や泌尿器科などで、集中的にトレーニングを受けます。この期間については、半年間でも1年間でも、自分で決められます。半年間のローテーションを選択した場合、残りの半年間は千葉大学病院において手術チームの一員として診療に参加することになります。
千葉大学病院において、再び手術チームの一員として診療に参加します。能力に応じて、各種手術に際して執刀することが可能です。これまでの研修で得た知識と技術を活かして指導的能力を発揮し、手術チーム1年目の医師や研修医など後進の指導も行います。
研修期間全般を通して、臨床医学に根差した、実地診療にフィードバック出来るような研究を行うことを求められます(純粋な臨床研究でも、基礎医学と連携した臨床研究でも構わない)。研究成果をまとめ国内での主要学会、国際学会での発表を行い、また学術誌に報告することを求められます。
臨床研修医の先生方を対象として、千葉大学婦人科の手術チームが実施する短期研修プログラムも提供しています。 研修期間は1ヶ月から6ヶ月まで自分で決めることができ、延長や短縮も可能です。研修期間中は千葉大学婦人科の手術チームの一員として勤務します。
手術には助手として参加します。実際に手術を遂行する一員に加わることで、われわれの手術チームが行う手術手技を間近で見学し、流れを学び取ることにより、婦人科腫瘍外科手術に興味を持ってもらえたらと考えています。われわれは、重篤な合併症を有する患者さんや進行癌患者さんに対して手術を行うことが多く、その場合は患者さんの呼吸・循環動態に特に留意した術後管理を心がけています。手術チームの一員として周術期管理を学びます。
中心静脈カテーテル挿入、皮下埋め込み型中心静脈ポート留置、腹腔ドレーン挿入や透視下での腹腔ドレーンの入れ替え、胸腔ドレーン挿入などの処置に当初は助手として付き、CVシミュレーター(鎖骨下静脈・内頸静脈穿刺を練習する人形モデル)などを利用して感覚をつかみ、婦人科手術チームスタッフの指導のもとに術者として手技を習得することが可能です。中心静脈カテーテル挿入は、循環動態を経時的に把握する全身管理が求められる症 例が多い産婦人科領域(婦人科腫瘍分野だけでなく、大量出血→出血性ショック等循環 動態が急激に変化する可能性がある出産を取り扱う産科分野においても)では身に付け ておきたい診療手技であるとわれわれは考えています。
また、医学部生を対象とした手術チームの見学も受け付けています。
三橋 暁 ・ 加藤 一喜 ・ 楯 真一
加藤 一喜 千葉大学医学部 産科婦人科学
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