臨床グループ

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胆膵グループ

メンバー

大野 泉  講師 [腫瘍内科]
沖津 恒一郎  医員 [腫瘍内科] 
大山 広  病院講師・グループ長
髙橋 幸治  助教 [腫瘍内科]
菅 元泰  医員 [腫瘍内科]
永嶌 裕樹  医員
大内 麻愉  医員
杉原 地平  大学院生
關根 優  大学院生
髙橋 知也  大学院生
山田 奈々  大学院生
酒井 美帆  大学院生
渡部 主樹  大学院生
大金 良槻  大学院生
黒崎 宏貴  大学院生

グループ紹介

 当グループは、スタッフ7名、大学院生8名、さらに研修中のローテーター数名という布陣で、日々の診療と研究にあたっております。我々が拝見している胆のう、胆管、膵臓の一般的な病気としては、胆石症や胆のうポリープ、膵炎などが挙げられます。対象としている病気は、良性疾患(胆のう結石、胆管結石、膵嚢胞性疾患、膵石症、自己免疫性膵炎)から、原因不明の難治性疾患や稀少疾患、胆膵癌(膵臓癌、胆管癌、乳頭部癌)などであり、幅広く診療および研究を行っております。
 まず、教育・研修に関してですが、若手の先生方には、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)EUS(超音波内視鏡)を応用した内視鏡手術(プレカット法を含む内視鏡的乳頭切開術、内視鏡的胆管/膵管/十二指腸ステント留置術、結石除去術、超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)、超音波内視鏡下膵仮性嚢胞ドレナージ術(EUS-CD)、超音波内視鏡下瘻孔形成術(EUS-HGS))を積極的に術者として行ってもらっています。指導体制として、各指導医が専門分野についてのレクチャーやEUS、ERCPのハンズオントレーニングを行うことで、研修者の実力UPと同時に、指導者側の指導能力UPを図ります。
 当グループでは、研究のプロセスと結果が、患者さんと我々医師の双方にとって有益なものとなるように、共に診療・研究にあたっていただける仲間を募集・歓迎いたします。
研究に関しては、加藤直也教授のもと、日々の臨床における疑問点・解決したい課題を持ち寄り、若手の先生方の意見も積極的に取り入れ、OPENで明るい雰囲気で日々の臨床・研究を進めています。みなさんと一緒に働ける日を楽しみにしています。ご興味を持ってくださった方は、いつでも気軽にご連絡ください。見学も随時受け付けています。

専門領域(取り扱う疾患や研究テーマ)

我々は消化器内科分野でも胆膵領域を中心に診療・研究を進めています。
主に対象としている疾患は以下の通りです。

・胆道癌
・膵癌・膵腫瘍
・悪性胆道狭窄
・原発性硬化性胆管炎
・総胆管結石(困難結石)
・膵仮性嚢胞
・IgG4関連硬化性胆管炎・膵炎

当グループの診療および研究の概要をいくつか紹介させていただきます。
1.胆膵癌
 1) 他科・他施設との良好な協力連携に基づく集学的治療

グループでは、主に、切除困難胆膵癌を中心に積極的に化学療法を実施しています。放射線科、肝胆膵外科と他科合同カンファレンスを定期的に行い、診断、診療において最善な提案ができるように留意しています。また、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)を中心とした多施設共同試験にも、本邦発の新しい治療開発に貢献すべく、積極的に参加しています。

 2) 若手消化器化学療法家の育成

消化器領域の若手化学療法家の育成も、当グループの目指している重要な目標の一つです。化学療法の治療経験がない若手の先生方でも一人で、診断から化学療法までができるようになっていただくために、化学療法のマネージメントの基礎から、グループ診療の中で実践を積んでいただくことが可能です。

 3) 現在、胆膵癌診療において以下のような取り組みを準備または開始しています。

・早期膵癌診断プロジェクト EPIC研究
・膵癌患者向け啓蒙活動「膵がん教室」

一方、この難治癌の病態解明の一助となることを目標に以下のような基礎的な研究を行っています。
2.胆道ドレナージを始めとした胆膵内視鏡によるBest supportive care

胆膵癌の診療は、抗癌療法(化学療法)と適切な胆膵内視鏡処置の二つの両輪により支えられています。我々のグループでは、安定した抗癌治療を行える体調を維持するため、また、患者さんのQOLの向上のために胆膵内視鏡処置を重要視し、以下のような処置を行っています。

 1) 悪性胆道狭窄に対する胆道ドレナージ

当グループでは、内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(ERBD、ERGBD)、消化管グループとの協力のもと行うバルーン内視鏡下胆道ドレナージ(DB-BD)、経皮的ドレナージ(PTBD、PTGBD)、超音波内視鏡下瘻孔形成術(EUS-HGS)など様々な方法で悪性胆道狭窄の改善を目指しています。

 2) 十二指腸閉塞

十二指腸狭窄に対して、積極的に十二指腸ステント留置を行い、患者さんの摂食状態の改善を目指しています。

3.胆膵疾患の難治性病態解明の試み

胆膵領域の癌は予後が悪いことが知られています。国立がん研究センターのがん統計データによると、2018年の癌死亡者数において、膵臓癌は男女ともに第4位、胆道癌は男性第9位、女性第8位であり、発症数も近年増加傾向にあります。これらの癌は早期には症状がでにくく、多くの場合は非常に進行した状態でみつかってしまいます。難治癌である胆膵癌を克服するためには、①早期に診断すること②有効な治療薬を選択することが必要です。当グループでは、診療を通じて得られた検体(組織から細胞、液状検体まで)の遺伝子の多様性(変異・多型)を次世代シークエンサーにより解析し、その成果を臨床に応用することを目標に研究を行っています。胆汁や十二指腸液、血液などから病変由来の遺伝子変異を検索し、疾患の早期診断や治療標的遺伝子変異の同定、治療反応性、予後との関連について検討しています。また、日常臨床では良悪性の鑑別が困難な病変にもしばしば遭遇しますが、従来の病理学的診断に遺伝子解析を加え診断精度を向上すべく検討しています。

このほか、胆膵疾患の診断・治療成績改善を目指して以下のような研究を行っています。

・cell free DNA、micro RNAなどを用いた胆膵癌早期診断の研究
・耐糖能異常と膵癌発症のメカニズムに関して
・胆膵癌における微生物環境の意義

胆膵癌の発生・増大・予後に細菌や真菌といった微生物の関連が近年示唆されており、癌を中心とした胆膵疾患と微生物叢との関連にも注目し、解析を行い、新しい診断・治療に結び付けることを目標に研究を進めています。

4.原発性硬化性胆管炎

原発性硬化性胆管炎は診断治療に苦慮する難治性疾患です。当院への紹介も多く、常時30-40例の患者さんを診療しています。一般的な薬物治療だけでなく、dominant strictureを有する症例には内視鏡治療を積極的に行っています。新規治療開発を目指して、治験にも参加しています。

5.総胆管結石(困難結石)

通常の方法で治療が困難な結石は困難結石と呼ばれ、20mm以上の胆管結石、10mm以上の積みあがった結石、合流部結石などが挙げられます。当院ではそうした困難結石に対しては1990年から積極的に経口胆道鏡を用いた結石破砕術を行っていることから、日本有数の症例数を誇り最新のスコープとシステムを導入して診療を継続しています。1988年から2017年までに困難結石165症例の治療を行い、胆道鏡下砕石術単独または体外衝撃波結石破砕術を組み合わせて、全例で破砕および除去に成功しています。

6.膵仮性嚢胞の治療戦略

急性膵炎後の膵局所合併症については、2012年に改訂アトランタ分類が報告され、壊死の有無と発症からの期間が4週以内か否かでacute peripancreatic fluid collection(APFC)、 pancreatic pseudocyst (PPC)、 acute necrotic collection(ANC)、 walled of necrosis(WON)の4つに分類されています。症候性の仮性嚢胞、WONに対しては、近年超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術(EUS-CD)が治療の主流となり高い成功率が報告されています。当院で1999年9月から2019年10月までに、140例の膵周囲液体貯留に対しEUS-CDを施行しており、関東近隣の施設の中では有数の症例数となっています。症例の内訳はWONが54例、膵仮性嚢胞が58例(このうち慢性膵炎に合併した慢性仮性嚢胞が45例)、外傷性・術後膵液瘻など28例でした。平均54歳、男性が約70%、膵炎のetiologyとしてはアルコール性が約半数、PPCのサイズは平均で約100mmでした。治療成功率は95.7%(134/140例)で、不成功例の多くは初期の壁が硬い拡張困難症例でした。EUS-CD時の偶発症は19例(13.6%)に見られ内訳は、処置後嚢胞感染6例、出血3例、ステント迷入3例、限局性腹膜炎2例、腹腔内フリーエアー2例等でした。これら偶発症は全例内科的治療で改善しており、致死的な合併症や手術を要した症例は認めませんでした。
2018年末よりWON、PPCに対する専用ステントであるHot AXIOSが使用可能となり、処置時間の短縮が得られ、またより効率の良いドレナージが可能となっています。

7.IgG4関連膵炎

自己免疫性膵炎は有病率5人/10万人の稀な疾患です。 現時点では確実な血清学的マーカーがないため、種々の特徴的な所見を総合して診断する必要があります。当科では2007年から2019年の期間に自己免疫性膵炎を72例(男性51例、平均年齢64歳)診断・治療しています。とくに膵癌との鑑別が重要となる限局型も32例経験しています。 診断に際して内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)や超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を積極的に行っています。病態解明を目指して自己免疫性膵炎におけるMicrobiome、Mycobiomeの意義に関する研究を行っています。また炎症性膵疾患における蛋白XやTLR8の関与についての研究を準備中です。

グループの活動

 ・大学院生の教育および知識の共有のため、抄読会および研究進捗報告(月2回)、病理部とのカンファレンス(月1回)を行っています。

学会参加

 ・2024年 ヨーロッパ肝臓学会(EASL)(イタリア・ミラノ) 参加

 ・2024年 米国消化器病週間(DDW)(アメリカ・ワシントンDC) 参加

 ・2023年 第59回 日本胆道学会学術集会 参加

院生紹介

大学院4年 遠山翔大先生

 2024年度現在、当グループには12人の大学院生が所属しており、内訳は4年生3人、3年生3人、2年生1人,1年生5人です。胆膵疾患患者の増加やinterventional EUSなどの胆膵内視鏡,悪性腫瘍に対する薬物療法の進歩に伴ってか、年々当グループを志望する先生が増えてきています。
 研究については、臨床研究と基礎研究いずれも本人の希望を考慮した上で実現可能なテーマを選ぶ形になります。臨床研究をメインにする、診療と平行して基礎研究を行う、集中的に基礎研究を行うなど人によって様々です。指導医の先生方は皆優しく、テーマに合わせて適切な指導をしてくれます。また、大学院生を中心として月2回程度、抄読会と研究進捗報告を行なっており、タイムライン通りに研究が進んでいるかグループ内で共有でき、かつ十分なフィードバックを受けられます。近年はこれまで当院で経験した胆膵疾患のデータベース化も進めており、そこから大学院生の研究や学会発表に繋げられるような環境作りもなされております。研究領域では山梨県立中央病院(ゲノム解析センター)やかずさDNA研究所、QST病院などと連携しており、先進的な研究に触れることができます。
 臨床においては当グループではERCP、EUSを中心とした業務に従事し、手技の研鑽を行います。膵癌、胆道癌などの悪性腫瘍の診療の他、巨大総胆管結石や術後腸管症例などの治療困難例、原発性硬化性胆管炎などの希少疾患も多く、幅広い症例を経験することができます。内視鏡手技に関しては大学院生が主な術者となり、EUSでの脈管評価や悪性胆道狭窄に対するドレナージ戦略等を集中的に学ぶことができ、研究のみならず臨床医として胆膵領域の専門性を高めるには良い経験になるのではないでしょうか。大学院を卒業する頃には胆膵領域の基本的な治療の習得が可能です。また、希望に応じて外来も担当でき、診断から治療まで主体的に行うことができます。
 興味がありましたら、ぜひ一度見学にいらしてください。