千葉大学医学部附属病院 呼吸器病態外科学 清水大貴
今回私はClinical Anatomy Lab(CAL)に参加するという貴重な機会を得ることができました。医学生として解剖実習に参加したときのことは今でも鮮明に覚えており、その時の緊張感は6年間の学生生活の中でもとりわけ大きなものでした。当時は人体の構造を目の前にして圧倒され、初めて目にする臓器や筋肉、血管を前になるべく多くの知識を吸収していくことで手一杯でした。今回医師になって臨床現場で働き、一外科医として研鑽を積む中で改めてこのような学びの場に参加することができたのは大変ありがたく思いました。医学生であった頃とは異なった心もちで臨むことができ、臨床現場で多くの患者さんの死を経験する中でご献体しようと決意された方々の気持ちに改めて敬意の念を抱きました。
私が専門としている呼吸器外科という分野では、重要臓器を含む胸部の疾患を専門としており、その手術の際には心臓から出ている大血管の剥離や切離といったような操作をしなければなりません。手術操作により出血を来すと致命的になるうることもあります。今回のCALにおいて手術の手順、手技、また自身では扱ったことのないような心臓の周りの解剖を確認することができました。教科書やビデオでの学習ではあくまでも二次元でのイメージであり、今回のように立体的に見て実際に触れることができたのは、今後の診療においてかけがえのない財産になると確信しております。執刀医の立ち位置に立ち、指導医の先生とコミュニケーションをとりながら時間をかけて手術操作をじっくり学ぶことは実際の手術室ではなかなか難しく、CALでの一日はあっという間に過ぎていきました。その一日は緊張のため疲労感もありましたが、それをはるかに上回る充実感を得ることができました。
また、実際に胸腔内を観察すると人工的に作られた肺モデルとは異なり、脂肪や結合組織、癒着などご献体の方が生前にさまざまな経験をし、生きていた証を感じることができました。改めてこのような機会を頂いたことに感謝の念を抱くと共に、今後に必ず生かしていこうという決意が生まれました。
最後になりますが、ご献体くださった方々、そしてその意志を尊重されたご遺族の方々に心から感謝申し上げます。