少しずつ国内にも導入されてきたリバース型人工肩関節置換術(Reverse Shoulder Arthroplasty:RSA)は、棘下筋および小円筋の高度萎縮や脂肪変性を伴い外旋機能が著しく低下している症例に対しては,RSA単独では外旋可動域の改善は望めず、広背筋および大円筋をともに移行するL'Episcopo法が外旋可動域の改善に有用とされています。しかし、L'Episcopo法の何が外旋可動域に影響を与えているのかはっきりとわかっていません。
そのため、この研究の目的は、外旋可動域獲得をたくさん得るために移行腱の至適な移行位置を明らかにすることにしました。研究の同意を頂いているご遺体の肩関節に実際のRSAのインプラントを挿入し、上腕骨の様々な位置に腱を移行し、内外旋角度を角度計を用いて測定しました。
結果としては、広背筋・大円筋の移行位置を最外側にすると、外旋角度が増加するが、逆に内旋角度が減少してしまいました。移行位置を後内側にすると外旋角度が増加しましたが、内旋角度は減少しませんでした。同時に実施していた安定性評価の実験も加味して、最も安定した上で可動域の広い手術法の開発の助けとなる基礎データを得ることができました。この結果は英語論文として世界に発表していく予定です。お体を研究に使用する事へ同意頂いた献体してくださった千葉白菊会の皆様とその判断を支持して頂けたご遺族の皆様に深謝致します。ありがとうございました。