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第10回、第11回 ASSET-Chibaコース 2021/7/3〜7/4開催

 多くの外傷で合併する大量出血は、患者の生命に直結します。米国外科学会により設立されたご遺体を使用したトレーニングプログラムASSET(Advanced Surgical Skills for Exposure in Trauma)は、外傷において致命的となる、四肢・体幹部の血管損傷に焦点をあて、主要血管への迅速かつ安全なアプローチを目的としています。毎年渡米して繰り返しASSETを受講してきたという日本の外傷外科医も多いです。2016年より千葉大学CALにおいて米国外科学会公認でASSETコースを開催しています。これは北米以外で開催された初めてのコースでありました。2018年には、テロに用いられる手段として銃創・爆創・切創による外傷の対応経験が治安の良い日本では経験できないことから、厚労省による外傷外科医養成事業が始まり、その一部をこのASSETコースが担うことになっています。また、日本外科学会外科専門医修練カリキュラムコースにも認定されており、外傷外科医にとって参加を熱望するプログラムです。

 このプログラムでは、Thiel法により固定されたご遺体を1体に対して参加者を2つのグループに分けて教育を行いました。各回に2体ずつ、合計で4体のご遺体で勉強させて頂きました。参加者である医師は,緊急救命処置・血管露出手技を行うことでその方法や解剖学的構造を学習し、見学者である看護師は、医師により露出された血管を確認することで解剖学的構造を学ぶとともに、臨床現場で必要となる器械出しの手技についても学習しました。なお、それぞれの手技の合間では、実臨床に近い想定で学習するために、熟練した指導者による、各露出対象血管を損傷したと仮定したcase presentation方式の講義を行いました。また、処置・手技の最中も質問やディスカッションを重ねることで、疑問点や不明な点を解決しながら教育を進めることができました。

 このプログラムは10回目と11回目の開催となりましたが、本来は1月に開催予定でした。COVID-19の影響により延期となり、開催が危ぶまれましたが何とか実現できました。お陰様で受講した先生からは、とても有意義なプログラムであったと、ほぼ最高評価を得られ、主催者一同本当に嬉しく思います。今回のコースでも、通常診療では詳細まで確認できない解剖や、救命処置・手技の詳細なコツなどについて、実際の御遺体を用いて各受講生が十分に確認することができました。

サージカルトレーニングという医師にも解剖する機会を与えて頂いた献体された千葉白菊会の方々、並びにご遺族の皆様のご厚意に心より御礼申し上げます。今回学んだ多くの外傷外科医が、日本各地で一人でも多くの患者の命を救う知識と技量を得られたと確信しています。